Googleの物語はスケールアップの物語でもあります。それはコンピューター製品がIT中心のビジネスにシフトしたことを示す一つの偉大なサクセス・ストーリーです。GoogleはビジネスとITの融合を実践的に示し、広くITコミュニティにDevOpsのコンセプトを広めた初めての企業のひとつです。この本は、その変化を実際におこなったさまざまな人々の幅広い知見によって書かれました。
Googleは伝統的なシステム管理者の役割を変化させたことで成長しました。それはシステム管理について以下のような疑問を投げかけています、「われわれには従来のような権威をもたせる伝統を守る余裕もなく、考え直す必要があり、すべての人がキャッチアップするのを待つ余裕はありません」。「Principles of Network and System Administration(ネットワークとシステム管理の原則)」という本において私はシステム管理は人間とコンピューターのエンジニアリングの形であると主張しました。これは何人かのレビュアーに激しく批判されました、"我々はまだこれがエンジニアリングと呼べる段階にはいない"と。当時わたしはこの分野は独自の魔術のような文化に陥っており将来を見通すことができませんでした。Googleはその運命を強制的にシリコンバレー流に描いてみせました。再定義されたそのロールはSRE、あるいはSite Reliability Engineerと呼ばれました。私の友人の何人かがこの新世代のエンジニアの初期にSREであり、ソフトウェアや自動化を通じてその役割を具体化してみせました。当初、彼らはとても秘密主義でした、またGoogleの中と外で起きていることは大きく異なっていました。Google内での経験はユニークでした。時間が経つにつれ、情報や手法が内外ともにあふれるようになりました。この本にはSREを影でつき動かしている意欲が書かれてあります。
ここでは、Googleがどうやってその素晴らしいインフラを構築したかだけでなく、いかに学び、それに合わせてツールや技術のマインドを変えてきたかが分かります。われわれもそのオープンマインドをもって困難な課題に立ち向かうことができます。ITカルチャーの典型的な側面として多くの場合、実践的な組織は独断的なポジションによりその技術が過去のものとなってしまうことがあります。もしGoogleがこれを克服できたのであれば、われわれにだってできます。
この本は単一のビジョンをもった一つの会社のエッセイを集めたものです。会社のゴールの周辺に貢献があるという事実がこれを特別にしました。複数の章において共通のテーマ、共通の(ソフトウェアシステムの)特徴が何回もでてきます。異なる視点から見たり、競合する利害の解決のためにそれらが相関していることがわかります。これらの記事は厳格な学術記事ではありません、彼らは個人のアカウントでさまざまな個人的なスタイルや個別のスキルセットの観点から誇りをもってこれらを書きました。勇敢に、そして業界の文献では稀にみる知的誠実さをもって書かれています。中には「これはやってはいけない、常にこうやりなさい」と書いてあるし、それ以外はもっと哲学的なこと、暫定的なこと、IT文化のさまざまな個性に根ざしたこと、それぞれの役割から得られた方法が書かれています。我々はこれらの旅の一部ではないし、彼らが挑戦してぶつかってきたことに関するすべてを把握しているわけではないので、あくまで傍観者としての慎ましやかさを持って順番に読み進めましょう。なぜ彼らはXをやらなかったのだろうか?Yしたいときはどうなるのか?年間のふりかえりはどうやったらいいだろうか?われわれの考えや経験から思いつくアイデアとその理由を比較しながら、我々のたくさんの疑問をもつことこそが真の遺産です。