Twitterがイーロン・マスクに買収されたのは、ご存知の通り Twitterが稼げなかった からです。 それではマストドンの方はどうでしょう。
端的に言うと 壊滅的です 。
Webサービスのマネタイズ手段といえばまず広告が一番メジャーですが、 デフォルトでは広告などを挿入する機能はありません。 オープンソースソフトウェアなので開発すれば機能追加できるのですが、 そもそも 広告を見たい人類などいない ので、広告のない他のマストドンサーバに行ってしまうでしょう。 ただ、 コミュニティ沼は深く、簡単に抜け出せない ので、 沼に十分はまり切った人類なら喜んで広告を見てくれるかもしれません。
現状では、ほとんどのサーバは 寄付 で賄われています。 いや、賄えてませんね。 僅かな寄付と、管理人の持ち出し で運用されています。 企業運営のサーバなどは、完全な赤字垂れ流しなんじゃないでしょうか。
なお、日本では法的に 寄付を受けること自体が難しい という問題もあります。
best-friends.com では毎月のサーバ費用が公開されています。 週のアクティブユーザが600人くらい、トゥート数3万くらいに対し、 AWSを使って最低限の構成で月に 500ドル 程度かかっています。1
最低限の構成なのでシングルAZ、すべてスポットインスタンスが使われており、 インスタンスが売り切れたら即停止というサービスレベルです。
とはいえこの中でEC2サーバ自体の金額は たった25ドル で2、 AWS特有のロードバランサやNATゲートウェイなどの 固定費 が100ドル、 データベースやRedisなどのマネージドサービスのミドルウェアが160ドル、 そして何より厳しいのが 画像を保存するS3 で130ドルもかかっています。 特にS3に保存されるデータは増えることはあっても減ることはないので、 S3の金額は 無限に増えていく のが運営の最大の障壁になりそうです。
SNSの機能で最も重要なのは、メッセージをユーザに配信すること ですが、 マストドンなどの分散SNSではこの部分で メッセージを別のサーバに配信する という複雑さが加わります。 中央集権的にソーシャルグラフを管理しメッセージの交通整理をやってくれるサービスなどは無いので、 それぞれのサーバがそれぞれのサーバに、しかもユーザごとにメッセージを配信しないといけません。 たくさんの他サーバからフォローされているユーザがトゥートを投稿すると、そのすべてのサーバに対して通信を発生させます。3 当然通信は失敗することもあり、すでにクローズされたサーバに何度も再送し続けるなんてこともあります。 サーバ内でデータベースが完結しているTwitterに比べて、大きなコストがかかるのは明らかでしょう。
また、Twitterには無い(かつてあった)マストドン特有の機能としてサーバ内の全員が共有する ローカルタイムライン(LTL) がありますが、こちらも接続している全員にメッセージを配信するという、 サーバ間通信に勝るとも劣らない大きなコストがかかります。 Twitterのような巨大なコミュニティになった場合、そのジョブを捌き切ることが難しく、 また雑多すぎてユーザにはほとんど意味がないものとなるため、かつてのTwitterの判断と同じようにおそらくTLTの機能を削除することになるでしょう。 そうなるとそのサーバを コミュニティとして 提供する意味はなく、ただ単に機能を無料で提供するお人好し4になってしまいます。
マストドンは収益につながる可能性が殆ど無く、ユーザが増えれば増えるほどおそらく指数関数的に負荷が増えていきます。 単体でTwitterの 1/100 のユーザ数ですら抱えるサーバが出てくることは無さそうですし、 出てきたとしてもそこにLTLは存在しないでしょう。 そうなるとただ ドメイン名がかっこいい くらいの価値しか無い、無意味にカネを垂れ流す存在になり、持続可能性がありません。 マストドンサーバ運営者の中にはLTLの存在を疑問視する声もありますが、コミュニティとしてやはりある程度必要だと思います。 LTLの存在を否定すると、おひとりさまサーバが最適解になってしまいます5。 結局、懐が致命傷で済む程度のコストを掛けながら、無理のないサイズ感のLTLを維持するという 敗者の持続可能性 を目指すしか無いのではないかと思います。