C言語で定義した変数にアセンブリで値を代入したいが、リンク時にエラーがでる

[keisuke713]

概要

アセンブリの練習を兼ねて c言語で定義した変数にアセンブリで値を代入する という処理を書きたいと思っています。

以下がそのコード( test.c )です。

int main() {
    int result; // 値の書き込まれる変数
    __asm__ __volatile(
        "li s1, 10\n"    // s1レジスタに数値10を読み込む
        "la s2, %0\n"    // 変数resultのアドレスをs2レジスタに読み込む
        "sw s1, 0(s2)\n" // s2レジスタに読み込んだresultのアドレスにs1に読み込まれている値(=10)を書き込む
        : "=r"(result)
    );
}

clang --target=riscv32 -ffreestanding -nostdlib test.c でビルドしようとすると以下のエラーが出ます。

ld.lld: error: undefined symbol: a0
>>> referenced by test.c
>>>               /var/folders/vl/32_hws8n5dl5f70217nqsp1m0000gn/T/test-a05231.o:(main)
clang: error: ld.lld command failed with exit code 1 (use -v to see invocation)

clang --target=riscv32 -ffreestanding -nostdlib -o test.o -c test.c && nm test.o でシンボルテーブルを確認すると確かに a0 が未定義のシンボルとなっています。が、a0がレジスタでなくシンボル扱いされる理由が分かりません。

         U a0
00000000 T main

llvm-objdump -d test.o で逆アセンブリしてみた結果は以下となります。

test.o: file format elf32-littleriscv

Disassembly of section .text:

00000000 <main>:
       0: 41 11         addi    sp, sp, -16
       2: 06 c6         sw      ra, 12(sp)
       4: 22 c4         sw      s0, 8(sp)
       6: 00 08         addi    s0, sp, 16
       8: a9 44         li      s1, 10

0000000a <.Lpcrel_hi0>:
       a: 17 09 00 00   auipc   s2, 0
       e: 13 09 09 00   mv      s2, s2
      12: 23 20 99 00   sw      s1, 0(s2)
      16: 23 28 a4 fe   sw      a0, -16(s0)
      1a: 03 25 44 ff   lw      a0, -12(s0)
      1e: b2 40         lw      ra, 12(sp)
      20: 22 44         lw      s0, 8(sp)
      22: 41 01         addi    sp, sp, 16
      24: 82 80         ret

本書とは直接関係のない質問で恐縮ですが、アドバイス頂けると助かります。

開発環境

OS:      macOS-13.2.1-x86_64-i386-64bit
PYTHON3: Python 3.10.10
CC:      Homebrew clang version 17.0.6 Target: x86_64-apple-darwin22.3.0 Thread model: posix InstalledDir: /usr/local//opt/llvm/bin
LD:      Homebrew LLD 17.0.6 (compatible with GNU linkers)
QEMU:    QEMU emulator version 8.2.1 Copyright (c) 2003-2023 Fabrice Bellard and the QEMU Project developers
OBJCOPY: llvm-objcopy, compatible with GNU objcopy Homebrew LLVM version 17.0.6   Optimized build.
MAKE:    GNU Make 3.81 Copyright (C) 2006  Free Software Foundation, Inc. This is free software; see the source for copying conditions. There is NO warranty; not even for MERCHANTABILITY or FITNESS FOR A PARTICULAR PURPOSE.  This program built for i386-apple-darwin11.3.0

### ソースコードのURL

_No response_

[nuta]

納得のいかないアセンブリをコンパイラが生成するときは、Compiler Explorer を使うと便利です。RISC-V rv32gc clang 系が32ビットRISC-V CPU用のclangです。

アセンブリを見てみると、la s2, %0が次の2命令に展開されていることがわかります。

        auipc   s2, %pcrel_hi(a0)
        addi    s2, s2, %pcrel_lo(.Lpcrel_hi0)

%pcrel_hi のドキュメント (リンク) を見ると、シンボルを受け取ることがわかります。つまり、ここで %0 の内容 (a0) がシンボルとして扱われています。=r (任意の汎用レジスタ) が制約として指定されているので、コンパイラが a0 レジスタを %0 として割り当てられ、そのレジスタ名が文字列として愚直に展開されています。

このようなメモリアクセスをする場合は、制約として m を使うとアドレス周りの扱いをコンパイラに任せることができます。

    __asm__ __volatile(
        "li s1, 10\n"    // s1レジスタに数値10を読み込む
        "sw s1, %0\n"    // s1の値を指定したメモリ領域に書き込む。
        : "=m" (result)
    );

int result をグローバル変数に移動すると、アドレスの取り方をコンパイラがきちんと合わせるのを観察すると面白いと思います。

[nuta]

余談ですが、インラインアセンブリ中でレジスタの値を変更するときは、その旨をコンパイラに知らせておく必要があります。clobber list と呼ばれるもので、次のような形で宣言します:

    __asm__ __volatile(
        "li s1, 10\n"    // ここでs1レジスタの値を変更している (Cコンパイラはアセンブリをそこまで深く理解していない)
        "sw s1, %0\n"
        : /* 出力 */ "=m" (result)
        : /* 入力: 何もなし */
        : /* 破壊されるもの (clobber list) */ "%s1"
    );

[keisuke713]

ご丁寧にありがとうございます。

コンパイルの際にアセンブリのコードにも変更が加えられるのですね。
アセンブリのコードはそのまま解釈されると勝手に勘違いしていました。
今後は上記サイトを用いてアセンブリ確認するようにします！

なるほど、レジスタがそのまま文字列として解釈されていたのですね。
仰る通り =m に変えたら実行ファイルが作成されるようになりました！

インラインアセンブリ中でレジスタの値を変更するときは、その旨をコンパイラに知らせておく必要があります。clobber list と呼ばれるもので、次のような形で宣言します:

こちらもご教示ありがとうございます。今後忘れずに宣言します。